華の日曜日

毎日19時更新。20代のサラリーマンの投資ブログです。読書と美味しいご飯と株式投資を楽しみに生きています。

夢見たシリーズ 風俗店とバッティングセンター

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「今日はありがとうございました。」
「いえいえ、こちらこそ。帰り気をつけてくださいね。」
先方の部長は丁寧な口調で私に伝えた。
 
出張で大阪に来ている。
ここのところ出張は増えているのだが、
大阪に出張で来るのは初めてだ。
 
「ああ、そういえば。」
思い出したかのように、島田は私を呼び止めた。
「kitchenさん、もし今日こちらに泊まるのであれば、この店寄ってみてください。」
ごつごつした手から1枚のカードが手渡された。
 
「これは。」
「kitchenさん、ここのところずっと弊社で打合せだったからお疲れでしょう。
ここのお店は私もよく行くのですが、おすすめでね。疲れ抜いてきてください。」
渡されたのは風俗店のカードだった。
 
受け取ろうか迷う暇もなく、彼は私の手をとり、カードを握らせた。
小さなため息。
相手にも気づかれているだろう。
 
「それでは失礼します。」
エントランスを出ると、すでに大阪の空は真っ赤に染まっていた。
 
 
ホテルに戻り、シャワーを浴びて夕飯を済ませる。
お好み焼き屋で夕飯を済ませた私は、島田から受け取ったカードを確認してみた。
どうやら、この場所から歩いてすぐのようだ。
 
私は腰を上げて、お店の方向へ足を向けた。
歩いているとわかるが、ここは夜の繁華街というところではない。
どちらかというと、小さな街の商店街といったところだ。
いくつかの閉まった店のシャッターがその空気を醸し出している。
 
そうしているうちに、お店の目の前へ着いた。
しかし、どうみても風俗店には見えない。
「カキーン。」
乾いた金属音があたりに響く。
これはどうみても、バッティングセンターだ。
 
「どうしたんだい、あんた。」
後ろから声をかけてきたのは、齢70は超えているであろう老婆だった。
「いえ、実は島田さんという方からカードをいただいたのですが。」
「どれ、見せてごらん。」
老婆はカードを受け取ると、じぃっとそのカードを見つめている。
「ふぅうん、島田さんがこのカードをあんたにねえ。」
「あんた名前は?」
 
「kitchenと言います。」
「覚えにくい名前だね、まあいい。入んな。」
老婆は私の前を抜け、お店の扉を開いた。
「カラン、カラン。」
ベルの音だけがあたりに響いていた。